どうも、rintaroです。
今年も読んだ本をまとめておこうとおもいます。
長くなってしまうので、上半期と下半期に分けました。
まずは1月から6月までの上半期の40冊!
画像付で紹介している本がその月のオススメです。
1月
十皿の料理 | 斉須政雄 |
思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方 | デイヴィッド・マクレイニー |
すばらしい新世界 | オルダス・ハクスリー |
ニッポン景観論 | アレックス・カー |
屍者の帝国 | 伊藤計劃,円城塔 |
焼く 日本料理素材別炭火焼きの技法 | 奥田透 |
アサッテの人 | 諏訪哲史 |
枯山水 | 重森三玲 |
広場のデザイン にぎわいの都市設計5原則 | 小野寺康 |
(マンガ)忘却のサチコ 1 | 阿部潤 |
フレンチシェフの斉須政雄さんの「十皿の料理」。
まっすぐアツい生き方に、耳が痛いが励まされる。
斉須さんの思考を時系列に読める「調理場という戦場」のほうが読み物としては好き。
どれだけ人間の記憶が適当なものである(可能性がある)か「思考のトラップ」で知ることができた。
もともとわたしは「海馬が死んでいる」と言われるほど記憶力のない人間だけど、自分の記憶は確かだと疑っていない人のほうが心配になる内容。
自分の癖だと思っていたことも、ただ脳の仕組みでしかない。
2014年末に「ハーモニー」を読み ディストピア小説づいてきて借りた「すばらしい新世界」。
光文社古典新訳文庫から2年前に出版された新訳がとても読みやすかった。
人間の自由はあらかじめ決められているか否かって、答えはあるのだろうか。
「屍者の帝国」、めっちゃ難解だった。
これは伊藤計劃ではなく円城塔の本なのだろう。
伊藤計劃は難しいテーマでも少しずつ深みに読者を導くのがうまい作家だった。惜しい人を亡くした。
このとき考えたことを記録したくてむりやり感想文を書いたりした。(【理解度30%】「屍者の帝国」感想)
"「屍者の帝国」での自我とは"と"「すばらしい新世界」での自由とは"という問いを、"言葉"という要素がつないだように感じた。
Amazon.co.jp: アサッテの人 (講談社文庫): 諏訪 哲史: 本
"言葉"への拘りだと、「アサッテの人」も強烈だった。
日常の狭間に狂気を見出すことを精神的な支えとしていた男。
狂気を感じるため定型化された日常を必要とするが、最終的には"狂気さえも定型化する"ことに気づき逃げ場を失っていくという話。
最初は狂気というより突飛くらいだったのだけど、日常に狂気を見出す手段が"言葉"だった。
日常に突飛を挟まないと、人生が"絵に描いたよう"すぎて気が狂いそうになる感覚は分かる気がする。
こういうネガティブな部分が共鳴する本が手元に欲しいと思う。
そんな本も本棚にあったほうが"精神的な支え"になる気がする。
(著者は特別なことをしたつもりはないそうだが)入れ子になっている手法もアサッテとわたしの日常がつながるようでおもしろかった。
都市計画のスケールになるとわたしの仕事には直接関係しないけど「広場のデザイン」と聞いてつい借りた。
広場という西欧的な空間をどう日本で解釈して設計するか、理論と具体的な手法がバランスよく紹介されている。
広場を設計しない人でも広場の見方が増えて良い本だった。
2月
これからの雑木の庭 庭空間を改善して快適に | 高田宏臣 |
住宅巡礼・ふたたび | 中村好文 |
工夫貧乏のシアワセ | 久住昌之 |
銀河市民 | ロバート・A・ハインライン |
アンソロジー カレーライス!! | 安西水丸,寺山修司,池波正太郎,伊集院静,小津安二郎,北杜夫,久住昌之 他 |
虐殺器官 | 伊藤計劃 |
伊藤計劃記録 | 伊藤計劃 |
(マンガ)プリンシパル 1 | いくえみ綾 |
(マンガ)アイアムアヒーロー 4,5 | 花沢健吾 |
「これからの雑木の庭」は写真のキャプションがポエムっていて萎える。
写真はとてもいい。
でもこれ見て同じものを違う場所につくっても仕方がないし活用は悩ましい。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) 「虐殺器官」は伊藤計劃のデビュー作。
遡ってここまでやっときた。
言霊という単語があるとおり、言葉は魔法であり呪いである。
それ以上に、感知できないうちに自我を形成しているのかもしれない。
言葉が表層の意味だけでなくもっと深く思考を支配するイメージは、「屍者の帝国」で書かれているんだろうな(分からなかったけど)。
ひさしぶりに読んだオムニバス作品だった「アンソロジー カレーライス!!」。
カレーは作っても食べてもたのしい。
「プリンシパル」、少女マンガは登場人物の区別がつかなくて読めないことが分かった。
3月
家族の勝手でしょ! 写真274枚で見る食卓の喜劇 | 岩村暢子 |
ハマるしかけ | ニール・イヤール,ライアン・フーバー |
工夫癖 | 久住昌之 |
データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則 | 矢野和男 |
男のカレー | 井上岳久 |
(マンガ)三月のライオン 1,2,3 | 羽海野チカ |
(マンガ)アイアムアヒーロー 6,7,8,9 | 花沢健吾 |
工夫癖 「孤独のグルメ」の久住さんによる「工夫癖」。
思いついたことは工作で解決しようとせずにはいられない癖のある父の話。
みっともないのに憎めない工作を繰り返す父に、息子目線の久住さんと一緒になって生きざまを感じ取ってしまう。
「三月のライオン」は良い良いと言っているひとが多くかえって敬遠していたものを、やっと読んだ。
将棋の才能があるのに孤独!悲劇!ぶりたがる主人公の桐山零。若さか。
だれしもそういうとこあるけどさ、ちょっとうんざり。
しかし彼の周囲の人物たちはとても魅力的。
周囲の人物と交流するなかで、桐山零自身もどこかで分かっていながら放置していた自分に向き合っていく、という話。
ちなみに島田開がいちばん好きなキャラクターです(棋士としては活躍がないけど)。
"幸せは加速度センサーで測れる!"という帯が強烈だった「データの見えざる手」。
ずいぶん少ない画素数の劣化した"幸せ"を捉えて騒いでいるな、と。
ただそうやって簡素化することで膨大な"幸せ"や"充実感"を計算処理できることは確か。
それでビッグデータを読み解こうというのは、人力より説得力があると思った。
そこから誕生した手法がどんな"幸せ"を提供するだろう。
センサーと人工知能が計算しておいてくれた人間の"幸せ"。
そうは言っても、そんな特別扱いするほど人間は複雑で予測不可能な存在だろうかとも同時に思っている。
4月
この野菜にこの料理 | 有元葉子 |
美しい風景の中の住まい学 | 中山繁信 |
美術、応答せよ! | 森村泰昌 |
サードプレイス -コミュニティの核となるとびきり居心地よい場所- | レイ・オルデンバーグ |
ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由 | ジョシュア・フォア |
愛について語るときに我々の語ること | レイモンド・カーヴァー |
(マンガ)三月のライオン 4,5,6 | 羽海野チカ |
(マンガ)アイアムアヒーロー 10,11,12,13 | 花沢健吾 |
愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー) 映画「バードマン」を観たら主人公が舞台化しようとしていたのが「愛について語るときに我々の語ること」だった。
作家はレイモンド・カーヴァー、翻訳は村上春樹。
端的に光景や事実を書きつらねる、表現を削ぎ落とした文体なので、ぼんやり読んでいると感情が読み取れない。
なぜこれが描かれたのか、常に考えながら読むのは緊張感があって楽しかった。
巻末の村上春樹による各短編への寸評がおもしろい。
村上春樹は意外にも、最後に希望のうかがえる短編が好きらしい。
「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」はすごく駄本っぽい邦題だけど、内容はおもしろい。
著者が記憶の達人ではないとこからスタートするので、そもそも記憶する意味あるの?とか言っちゃう。
記憶のテクニックより、急速に記憶のほとんどが外在化されている現代で記憶する意味を考えることができてよかった。
ちなみに本で知識を外在化できるようになった頃、ソクラテスは記憶しなくなることをめっちゃ嫌ったらしいよ。
そのこと自体が本で現代まで伝えられてきているのが可笑しかった。
1991年に刊行されていた「The Great Good Place」の日本語訳「サードプレイス」。
どういうわけか2013年に発売されている。
学生のときに読むべきだった。
5月
大聖堂 | レイモンド・カーヴァー |
心臓を貫かれて | マイケル・ギルモア |
チェンジング・ブルー | 大河内直彦 |
ネコ学入門 | クレア・ベサント |
壽屋コピーライター 開高健 | 坪松博之 |
男のパスタ道 | 土屋敦 |
日本建築集中講義 | 藤森照信,山口晃 |
日本の作家名表現辞典 | 中村明 |
りすん | 諏訪哲史 |
(マンガ)三月のライオン 7,8,9,10 | 羽海野チカ |
(マンガ)アイアムアヒーロー 14,15,16 | 花沢健吾 |
大聖堂 (村上春樹翻訳ライブラリー)
先月から続いてレイモンド・カーヴァー、「大聖堂」。
翻訳者の村上春樹曰く、彼のマスターピースと呼べる作品とのこと。
収録作の「ささやかだけれど、役にたつこと」がとてもすき。
野良猫のハートを掴もうとおもって「ネコ学入門」を読んだ。
結論としては、野良猫と飼猫は別物だということ。
甘かった。
ペペロンチーノのレシピのために1冊つかった「男のパスタ道」。
ネットで公開されている連載を読んでもわかるとおり、化学式にさかのぼってレシピ考えちゃう人。
こういう人のレシピだいすき。
惜しむらくは特別な日のペペロンチーノをつくる機会がわたしにはない。ないな。ない。
りすん (講談社文庫)
諏訪哲史の「りすん」。
小説の人物に見られる、という生々しい感触。
ありがちな仕掛けだと慣れた頃にやられる、と思う。
すっかり小説に引きずりこまれていたことに気づくが、時すでにおすし、読者も小説に参加させられているという作品。
手法と主題の合致が強烈、ほんとにやられたー!という気持ち。
本はだれかが読んでいるときに生きているのだろうか。
このあたりすこし「グラン・ヴァカンス」や「ラギッドガール」に通じると感じた。
とにかく読んでくれ!
6月
誰も読まなかったコペルニクス 科学革命をもたらした本をめぐる書誌学的冒険 | オーウェン・ギンガリッチ |
街場の文体論 | 内田樹 |
役者は一日にしてならず | 春日太一 |
露出せよ、と現代文明は言う 「心の闇」の喪失と精神分析 | 立木康介 |
街場の文体論
「街場の文体論」は、いわゆる文体論の本ではなかったがおもしろかった。
言語(言葉)がどんなふうに人間を形成するかを知ると、相手がメッセージとして発した以上の情報を知ることができる。
これってそういうメタメッセージを受信しようとしていなくても、感じていることだと思う。
オーラや空気という表現がそれなんじゃないだろうか。
それを意識的に理解しようとするのは格段の違いがあるけども。
聞き上手になりたいと思うとき、これを気にかけることにしている。
すこし映画づいてきて借りた「役者は一日にしてならず」。
千葉真一のインタビューが読みたい一心だったけど、草刈正雄がかっこよかった。
ダラダラ文がつづいて読みづらかった「露出せよ、と現代文明は言う」。
意地になって読み切ったけど、哲学をひっぱりだしてこういう言い方しかできない男とは関わりたくないなあ、という学びがあった。
ただマスコミが取沙汰した凶悪犯罪者の"心の闇"についての話はおもしろかった。
酒鬼薔薇事件の犯人の心理など極端な事例だと思ったが、そういう事例から見える共通項もあるんだな。
以上、40冊でした。
言葉に執着していることがよく分かる感想になってしまった。
そりゃ本読んでいるんだから言葉に執着してもおかしくないよね!
本の抜書は"ぬすみがき"にまとめているのでよかったらどうぞ。
ぬすみがき