2015/01/28

【理解度30%】「屍者の帝国」感想


読みましたよ「屍者の帝国」
「屍者の帝国」は伊藤計劃が30ページほどのプロローグを書き絶筆になっていたものを
円城塔が共著というかたちで書かれた作品
あらすじはググってくれ

ほんとうに分からなかった
登場人物が何を思い何を考えていたか…
などというレベルではなく何が起きているのか分からないレベルで置いていかれた

かえってそれも面白いかなとおもって感想を書いておくことにする



分かっていることが少ないので長々書いても仕方ない!
主題は「自我は何によって発生するのか」だと思いました

わたしは誰なのか
わたしという意識はどこから発生するのか
つまりは生きるとは何か



やっぱこういうのは対照的な存在も同時に考えたほうが分かりやすい
生きるとは何かを考えるなら死んでいる存在が登場する

屍者は脳にプログラムをインストールされ使役される死者のこと
この蘇生技術はフランケンシュタインによって普及した

屍者には魂がない
魂は21グラムの質量のある霊素として説明されている

だから脳に疑似霊素(プログラム)をインストールすることができるのだけど…
この技術の核心に近づくにつれ死者と生者のちがいが曖昧になってくる



疑似霊素はプログラムなので当然言語が存在するが
その言語は意識に直接語りかける
意識とはなにか


そういえば伊藤計劃は言語へのこだわりが多い
「ハーモニー」でもあちこちにコードが書き込まれていた

これ まえから不思議だなと思っていた
レトリックなどの表現技法ではなくプログラムのような言語に作家がこだわること
(理系の方にも人気なのはこのあたりかなと思うけどもそれは別の話か)


そう それで 意識とはなにか
第三部p398から屍者第一号のザ・ワンさんによって語られる
(厳密には屍者ではなく「目覚めただけ」と自称するが何言っているのかよく分からない)
(実際ほかの屍者とは違うことばかりなのだが普通の生者でもない)

人間の体内でのみ活性化する菌株の活動が意思である
菌株がわたしたち本来の意識や魂を上書きし偽の意識をもたらしているという

だから霊素はその菌株と交渉するパターン化したやりとりする言葉そのものといえる

菌株にも派閥があり一部しか疑似霊素の言葉を受けとらない
だからこそ不完全な屍者として蘇生する



脳に巣食う菌株というとファンタジーのようだが最後の最後で菌株は言葉そのものだと言われる
感染性もあり何より意識への影響力でいえばリアルな話だ

言葉と意識は切りはなせるか
そんなことを考えていたらこれ


みんな… もう言葉に感染しているんだ…



ハダリー・リリス(生者で菌株と会話できる無機質美女という特異点)が出てくると主人公ワトソンとの会話はとくに難解になり
正直出てこないでくれと思った

「ハーモニー」では難しい会話のときは話の核心に迫るかんじが面白かったのだが…
伊藤計劃は読者を分かった気にさせるのが上手だったんだろうか…


この作品自体が伊藤計劃は死者になっていて残された言葉を介して円城塔が書いたというのはできすぎていて鳥肌がたった
これを褒めるのは作者の死を含めて作品として見ているわけで悪趣味だろうな…
円城塔自身も触れていることなので見逃してほしい



2015年中にはウィットスタジオ制作でアニメ映画化だそう
この物語は近未来モノではなくて(伊藤計劃なのに!)19世紀末の歴史改変モノ
スチームパンク色と主人公が諜報員という設定はアニメ化で映えるかもしれない

難解な謎解きがどんな物語になるのかとともに画もたのしみ
また読み直そうとおもう