どうも rintaroです
不思議な本を読みました
内容そのものより文体に夢中になってしまいました
いや もしかしたらこの本はそちらがメインなのかもしれない
穏やかで不思議な読みくちの本
むずかしいけど感想を書いておこうとおもいます
引用のまとめはこっち
出来事は時系列に並んでいるが 過去の回想や未来のこともついでのように語られたりします
そのせいかちぎれてつながりを失った時間を追っているような
あてのない気分で読みすすみました
読者の視点は時折本の外の時間に追い出されます
人物との距離感も定まりません
人物にべたべたとした親近感はわかず観測者のような気分でした
物語のなかの出来事に対して人物たちも観測者のような目線をもっていたようにおもいます
人物と読者の視点が重なる瞬間だったのかもしれません
言葉少なな淡々とした筆致は
大げさな身振りや大声でスピーチされるのではなく
ぼそぼそと言葉を交わしているようでした
ほんとうに短い作品なのであっけなくふわっと終わります
読後も重いばかりが「良い本」の裏付ではないのかもしれないと初めておもいました
実際この文体では 重い本たりうる 具体的に記憶されるのはむずかしい
物語の詳細はうやむやになり 読書での体験だけが 隠すように記憶されるのではないだろうか
もちろん内容もとてもデリケートでおもしろかったです
もやもやした不安感や葬ることも忘れていた悲しい気持ちを拾いあげているとおもいました
人物に言わせた鋭いセリフはスパイスとして物語をひきしめていました
あるいは奥行を与えていました
人物それぞれが生きていくなかで知らず知らずのうち(もしくは自覚的に)築いた哲学が層と重なり物語を底支えしています
短編2つに共通して植物が登場しますが
なんのメタファーなのか
これがよくわからない
主人公の現状自体であることもあるし
目指す理想のかたちでもあるし
主題になっている悲しみをいちばん敏感に察知しているようでもありました
追記
「木々の私生活」内で語学教師兼作家の主人公が練っていた「第一章は幼い主人公の目線で描かれたごく短いある一日の物語で 第二章で大人たちの目線で何が起きていたのか語られる」という本の構想がおもしろかった
読んでみたい