飽きたら本をかえることで読書時間そのものは伸びるのでオススメ!
「定年ゴジラ」は「現在知vol.1 郊外 その危機と再生」で取り上げている方がいらっしゃって気になったので読むことにした
(引用のまとめはこちら)
本の概要とオススメできるところ
生真面目な銀行員だった山崎さんが定年を迎え ニュータウンで老後をはじめる物語
作者の重松清氏自身もあとがきで書いているが
父親の世代がマイホームに託した夢のかたちを探るのは、ある種の不遜な行為でもあっただろう、と認める。(p.427)というくらいかなりリアルにエグっている
うっかり定年前後の親をもつ世代が読むとじぶんの親の姿とダブってジンとする
それだけではなく ニュータウンの住宅を「幸せのかたち」と宣伝し作り売る立場だった開発担当の藤田さんが登場することがおもしろい
このことで 親の夢や心を探りながら読めるだけでなく 建築としてニュータウンがなにをつくったか(つくってしまったか)がぐいぐい迫ってくる
ニュータウンでの年老いた父(やその家族)を描くにあたって 開発担当を住まわせてしまうのはすごいアイデアだったとおもう
当然のように読んでいたけどあらためてすごい
建築や暮らしをデザインしているひとは退屈しないだろう
ニュータウンはふるさとたりうるか
「ほんとうはね、僕らの間でも、そこがずうっと問題になってたんです。ニュータウンはふるさとたりうるか、って。」(p.164)はっきりいうと現在の日本で単純にマイホームを買うことが家族のしあわせでゴールだとおもっているのは もうすでにオマヌケなことだとおもっている※1
と 娘婿がほとんどわたしと同じようなことを山崎さんに話していた
だが山崎さんには不満が募る
なぜだかわたしも娘婿に腹がたってしまった
主人公につられやすい
昼間むしょうに腹が立った理由が、やっとわかった。我が家をかまえるときに損得の話ばかりする、それが嫌だったのだ。山崎さんは、なんでもいい、もっと別の言葉を娘婿から聞きたかったのだ。(p.70)山崎さんは家を買ったときに
白い模型を前にしたときに
「もっと別の」父として家に夢や幸せを託していて
この白い模型が教えてくれたのだ、我々が目指すべき幸せがなんであるか、家族のために一家の主がしてやれることはなんであるかを。(p.41)
どの選択が正解だったか
夢を託すと言葉にすれば綺麗で娘婿はいかにも無粋におもえるが
夢を実現するための具体的な戦術として資産価値を考えているとだって言えるだろう
あーもう! どの選択が正解だったかなんて考えても仕方ない!
ベストを尽くしたのだ、開発した藤田さんも、移り住んできた山崎さんも。そう思っていたい。二十数年前の自らの選択を批判すると、別のもっと大きなものが否定されてしまう、そんな気もする。(p.25)それが否定を恐れた結果だとしても 選択を信じるのは日常を生きていく強さだ
否定から逃げていると分かっているから辛いこともある
選択を信じる気持ちはつねに揺らぐ
なにが気持ちを揺れもどすか
そのあたりは本を読んでください
すっかりフィクションはただのエンターテイメントだと軽んじていたなぁ…
将来や生きかたを考えるとき わたしにとって虚実はあまり関係なかった
※1
いや その時代に登場したあたらしい暮らし方が魅力的に見えるだけなのかもしれないが
当時だったらわたしもマイホームを買うことが賢く ほかの暮らし方はダサいと言っていたかもしれない